少しずつ明るくなる空。
煙草に火をつけようと、
ポケットのライターをさぐる。

「..ちゃん...上ちゃん...」


小さな声で
呼ばれた気がした。


後ろ振り向くと駐車場の方から


「こっちこっち!」

と、手招きをしている。


少しづつ近づくと
それが誰かわかった。

麗奈さんだ。

「専務いたでしょ?店にいると怪しまれるからさ。」


確かに。
バレたら大変だもんね。


車の影にしゃがんで話しを聞く。


「あのさ、店長と別れようと思ってるんだ。」


急展開すぎますよ。
10分ほど話すと、
店長のペースについていけないと言う内容だった。
尽くすのに疲れてしまった感じにみえた。


「上ちゃん。正直に答えて。別れた方がいいかな?」



真剣に考えた。
正直別れた方がいい気がした。

普段は優しい店長だけど
酒を飲むとタチ悪くて、
殴られた時も何回かあったって話しも、前に聞いたことがある。


でも、二人の問題だし、
別れた方がいいなんて
言えるはずがない。


だけど、苦しむ女の子を目の前にして
何も言ってあげられないのも....


でも、店長にもすごいお世話になってるし、
いない所で、
何か言うのも...

頭の中がぐちゃぐちゃになる。

しばらく考えていると、
麗奈さんが、


「上ちゃん。言って平気だよ。別れた方がいいって。」


麗奈さん。
背中を押してほしいんだ。



僕は重い口を開く。






「ごめん。わかんない。」


言えなかった。
店長を裏切ってしまう気がして。
うつむく僕に、麗奈さんは



「逆にごめん!
疲れてるのにこんな話ししちゃって!
上ちゃんは優しいね。
店長とこれからも仲良くしてあげてね!」


そう言うと麗奈さんは
小さく手を振り
駐車場の奥に走っていった。




僕は麗奈さんに軽く会釈し、
ゴミを捨てて、店に戻る。