やっぱり俺は娃弥のことを何も知らなかった。
やっぱり俺は娃弥のことを何もわかってなかった…。
娃弥の歌への想いも。
娃弥が壊れかけてたことも。
知らなかった……。
でも、もし気付いていたとしても俺は娃弥に何かしてやれる事があったか?
「マサキ、これ娃弥から預かったんだ」
店の奥から出てきたおやじさんは、俺にカセットテープを差し出した。
娃弥から…??
「娃弥はここにいたよ…でも、今はもういないがな……それ、聴くか?」
俺は頷くとおやじさんにさっき受け取ったテープを渡した。
おやじさんがそのテープをレコーダーに入れて再生ボタンを押した。
しばらくテープの巻ける音がして、娃弥の声がした。
『マサキへ。
聞こえてる?娃弥です。
マサキがこれを聴いてるってことは、私は日本にいないってことだよね。
なんてありきたりこと言ってみたり。
私の病気のこと聞いちゃったかな?でも、私の口から言わせて?
喉の病気なの私。ずっと黙ってたことホントにごめんなさい。
あのね、なんで手紙じゃなくて録音テープにしたかって言うとね。
私の声を忘れないで欲しいから。
私ね今外国にいるんだ。手術うけるの。
ねぇマサキ。手術、成功したらきっとまた会えるよ。
…でも、もし失敗したら……そのときは、きっともう私たち会うことはないよ…。』
かすかに鼻を啜る音が聞こえた。
しばらくして、また震える声で話し始めた。
いや、最初から震えてた。
何回取り直したんだろう?と考えると目頭が熱くなった。

