S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~

嬉しそうに卵を混ぜる横顔は、さっきから笑顔で緩んでいる。
そう言う顔を見ると、ついつい苛めたくなって来るから不思議だ。

「何、ニヤニヤしてんだ。気持ち悪い。」

その言葉に、安浦は顔を真っ赤にした。

「気持ち悪いって、酷いです!」

拗ねた様に顔を背ける姿。

こんな下らないやり取りをしている時点で、もう気持ちは通じ合っているのか?

俺は試すように、後ろから腰をグッと抱き寄せた。

「そんな態度を取ったらどうなるか分かっているのか?」

持っていたボウルをそっと奪い、耳元に顔を近づける。
...逃げない。

「どうせ『同棲してるみたい』とか思ったんだろう?」

俺は、更に試すようにそう言った。
『違います!』そんな抵抗を期待していたのに、何故だか安浦は恥ずかしそうに俯く。

言ったことが当たったのか?

『同棲』って...。
これは、俺の勘違いでは無いで欲しい。

やはり、確証が欲しかった。

「そう言えば、さっきの俺の問いに答えてなかったな。」

そう言うと、安浦の体を俺の方に向ける。
この至近距離に、恥ずかしそうに身をよじる姿が何ともいとおしい。

「俺の事どう思っているんだ?」

先程と同じ問いかけをする。
ぶつかる視線は尚も恥ずかしそうだが、それでもしっかり意思を伝えようとしているのが分かる。

「私は、平畠さんの事をすき...。」

言葉を待たずに、俺は安浦の唇を奪った。
やっと、聞きたかった言葉をくれるのに、もったいない気がして...。
いや、こんなに真っ直ぐ言われる事に慣れていないから、ただの照れ隠しなのかもしれない。

「聞こえなかった。」

唇を離すと、俺はそんな気持ちに気付かれない様に悪戯っぽく笑った。

「ですから、平畠さんのー。」

構わず続ける安浦の言葉をもう一度唇で制する。

「悪い。お前ってイジメたくなるんだよ。」

ついついそんな事を言ってしまう俺を、安浦は小動物のような瞳で見つめる。

可愛い。

不覚にもそう思ってしまった。