そして、前と同じように砂浜に座った。
 冬の海はすごく寒い。
 マフラーを結びなおした。


 「榊さん、留学・・・するんですか?」


 あたしは気になっていたことを切り出した。




 「ああ、行くことにした」




 ほんと、だったんだ・・・。
 どこかで信じていない自分がいた。
 だけど、紛れもない現実なんだ・・・





 「が、がんばってくだ・・・さいね!」


 あたしは今にも涙がこぼれそうだったけど、堪えて笑った。
 最後くらい、笑顔でいなきゃ。
 榊さんから会いにきてくれたんだから。



 「雅、」





 優しい声であたしの名前を呼ばないで・・・。
 笑顔でいられなくなるから。