車に乗っている間、あたしも榊さんも一言も言葉をかわさなかった。 榊さんを盗み見ると、とても柔らかな表情をしていた。 ――――― 着いたのは、あの日来た、海だった。 榊さんは何も言わず、一人で車から降りていった。 あたしも慌てて後に続いた。 「さ、榊さん!」 「ん?」 手には煙草。喫煙者だったんだ。 なんとなくイメージじゃなかったから、ちょっとビックリした。 「なんで、急に・・・」 「まあ、こっち来なよ」 と、おいでおいでする。