「こんなこと言える立場じゃないのも分かってる。それでも、伝えたかった」
翔平に引きずられながら、離れていく梢。
今、どんな顔してるんだ。
「もう、ここには来ねえから。本当に悪かった。そいつと幸せになれよ」
最後ぐらいかっこつけさせてくれ。
俺はそれだけ言うと、踵を返した。
本当の恋ってやつをお前が教えてくれたんだと思う。
お前を好きになって、本当によかった。
「先輩…!!!」
バカみたいにデカい声と力が俺の全身に響いた。
何が起きてんだ…?
「勝手に全部終わらせないでよ…先輩、あたしを見てよ」
それは梢の声で、俺は後ろから抱きつかれているのだと今、理解した。

