「でも、そのお願いは聞けねえわ」
ぎゅっとスカートを握り締めていたあたしは、ふわっと何かに包まれた。
水道の水は出っ放しで、ジャーと流れる音がする。
散歩中の犬のワンとほえる声もする。
なのに、あたしと先輩のいる空間だけ時間が止まったみたいだった。
「・・・先輩?」
「俺もとっくに桜が好きだったよ」
「え?ええええええええええ」
「もう少し可愛い反応しろよ」
先輩に抱きしめられながら、あたしは声を上げた。
だって、夢じゃないかって思うでしょ、普通。
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