「・・・巧、何してんだ」 聞いたことのない低い声だった。 ぐいっと巧くんの腕を引っ張ったのは、 「・・・櫂さん?」 先輩だった。 なんでここで先輩が出てくるの・・・? 私はびっくりして声も出せなかった。 「桜ちゃん、嫌がってるだろ。離してやれよ」 「・・・俺はただ桜ちゃんに気持ち伝えただけですよ」 睨み合う二人。真冬の風が容赦なく吹き付ける。 「好きなら、相手の嫌がることすんなよ」 そう言った先輩の目はどこか悲しそうだった。