「じゃあ楽しんでね」 「おう、気をつけてな」 「すぐ隣だから!」 なんて笑いあって、あたしは聡の家を後にした。 玄関を出たそのときだった。 ぐいっと引かれた腕。 「きゃっ」 小さく悲鳴が漏れた。 「桜ちゃん、行かないでよ」 この声・・・ 「巧、くん・・・?」 絶対そうだ。この香り、巧くんだ。 何度もこうして抱きしめられたことがあるからすぐわかった。