「慎太郎くん」
長谷川さんの登場により、お開きになったあと、凛とした声が後ろからした。
「リカさん」
そっか。翠さんは、恭平さんと帰ったか。
可能性のなさすぎる恋に、自分の気持ちに嫌気がさす。
「駅まで一緒に帰ろう?」
「あ、うん」
俺は切なさを隠しきれずにいたのかもしれない。
「慎太郎くん、翠のこと気に入ってるんでしょ」
まんまとリカさんに言い当てられる始末。
俺の少し前方を歩いていたリカさんは、クルッと後ろを振り向いた。
その表情は、なんとも言えない感じだった。
ちょっと寂しそうな、でも凛とした瞳。
なぜか、胸が痛んだ。
「気づいて、たんすか」

