「お、教えて欲しいんだけど……」 思い切って言ってみる。 早瀬君はチラリと私を見て、 「いいよ」 と、答えた。 心なしか笑いながら言ったように見えた。 座っている私の横で、半腰で身を乗り出した早瀬君が人差し指で説明する。 早瀬君が作った影の中にすっぽり収まった私は、説明を聞きながらも、早瀬君のシャツの柔軟剤のいい匂いと、時々上下する喉仏と、筋張って大きな手と指が気になって仕方なかった。 変な汗をかいた。 聞かなきゃよかった。 あんまり頭に入ってこなかったし。