車はマンションとは違う方向へ走る。


「どこに行くんですか?私制服ですよ」

「少し遠いよ」


先生は笑いながらネクタイを緩める。
優しい言葉を言う割には教えてくれない。
しかし瑞穂は何となくわかったような気がした。



不思議なことに長かった距離は先生と二人だとすごく短く感じる。


しばらくすると見たことのある場所についた。


「あ!ここ・・・!!」



いつだったか加津佐も含め3人で来た、オシャレな居酒屋風のお店。


「瑞穂さんこのお店、すごく気に入ってくれたみたいだから。
それにここなら人目もあまり気にならないでしょ?」


その言葉に瑞穂は目を輝かせて頷く。


「すっごく嬉しいです!!
ああでも加津佐さんも一緒だったらよかったですね!」


少し懐かしい気分になってそう言うと、有明はガクリと肩を落とした。


「・・・俺は瑞穂さんと二人で来たかったんだけど」

「は・・・・・・うあっ!?」


言われてハッとする。



「ええええ、えっと私も、その~・・・・・・せ、先生と・・・」

「はぁ~・・・残念だなぁ」


必死の瑞穂をからかうように有明はわざとらしくため息をついて店の中へと入って行った。