布津の家を出て車に乗り込み有明がエンジンを掛けると瑞穂はすぐにお礼を言った。


「今日はありがとうございました。これで今日はゆっくり寝れる気がします~。あはは」

「何言ってるの?」

「へ?」


キョトンとする瑞穂を一度だけ見ると有明は車を走らせた。


「まだ駄目だよ」

「え、何が・・・」

「携帯出して」


言われたとおりに鞄から携帯を取り出すと有明は前を見たまま指示をする。


「おうちの人に電話かメール」

「え?は?なんて・・・」

「『お友達とご飯食べて帰ります』って。
・・・『彼氏』でもいいけど」

「え!!」

「ああほら、シートベルト締めて」


戸惑う瑞穂をよそに淡々と一人で話を進める。


丁度赤信号で止まるともう一度瑞穂の方を向いて笑い、こう言った。




「そのまま帰すわけないでしょ?」


「・・・・・・!」




有明先生は結構、強引だ。

一見加津佐や国見に振り回されてるようだが、あの人達と仲がいいだけはある・・・。



流されやすい瑞穂はうろたえながらも言われるがままに親に電話を掛けた。