「私のこと気遣ってるのなら怒るんだけど」

「え・・・だって、結ちゃん布津のこと好きなんじゃないの・・・?」

「んー・・・なんて言うかね・・・自分でもよくわからないの」


深江がリズミカルに歩きながら近くの公園に入るので、瑞穂も後をついて行く。


「実は結、布津君と晴ちゃんに中学校の頃の自分を重ねてるだけかもしれない」

「中学・・・?」

「結にもいたんだあ。
近所に住む幼馴染」


――初耳だ。

笑いながら話す横顔が少しだけ悲しそうだった。



「結の中では一番の親友だったんだぁ。
でもね、中学3年の始めくらいだったかな・・・告白されてね。

私もまだ思春期真っ盛りっていうのー?
裏切られたような気分になっちゃったんだ。

唯一の親友が自分を親友だと思ってなかったんだもん。

一気に友達なんていなかったような孤独感とか押し寄せてね・・・」


もし私がもっと早くに布津の気持ちに気付いていたら――

有馬さんや結ちゃんがいない状況でそうなってしまったら・・・


同じように考えたかもしれない。




「友達としてだけど・・・今まであんなに好きだったのに、すごく嫌になって・・・
ずっと避けてたんだ。
答えも出さないまま。

そしたらさぁー!


・・・・・・彼、遠くに行っちゃった」



リズミカルに歩きながらも瑞穂の位置からじゃ顔が見えない。


元気な声なのに、どこか悲しい。



「え・・・なんで・・・?」


深江がずっと、ずっと、

口にしたくてもしなかった

瑞穂に伝えたかったこと――


それがわかった気がした。