有明先生と瑞穂さん

「ラブストーリーなんて、布津見ないでしょ」

「おう、よくわかったな」

「じゃあ何でコレにしたの?」

「デートっつったらこういうのだろ。
メッチャ泣けるらしいぞ。人少ないけど」


人が少なくてよかった。
ある程度会話ができる。
話す声よりもむしろボリボリとポップコーンを食べる音の方がうるさい。


「布津って何でそんなに食べて痩せてるの?」

「さあ?運動してるからじゃね?」

(納得いかない・・・)


まもなくして証明が落とされ暗くなり、静かに映画が始まった。


(この女優誰だっけ・・・)


今人気でよくドラマやCMに出ていて、見ない日はないような女優なのに名前が浮かばない。


おもしろくないわけではないが、よくあるお涙頂戴な映画だ。
二人で試練を乗り越えて最終的には結ばれてハッピーエンド。


(そういえば私、あんまり映画のラブストーリーって見ないかも)

ぼんやりそんなことを考えていると、隣で布津が大きなあくびをした。


「・・・もしかして退屈?」

「え、なんで」

「そんなあくびしておいて・・・」

「あくびしてた?ワリ・・・。
昨日あんまり眠れなくってさー」


コソコソと話しているが、人が少なくて本当によかったと思う。
「つまんねーわけじゃないんだけど、暗くなるとどうもね・・・」

「ふふっ、私はちょっとつまんないや」


そう言うと、布津が軽く瑞穂の頭を小突く。


「瑞穂といて背伸びなんてするもんじゃねーな。
しても意味ないし」

「ははっ、背伸びしてたんだ」



「んー・・・。
だって嬉しかったんだもん、今日のこと」






少しだけときめいてしまったのは内緒だ。