「初めて瑞穂さんのことを知ったのは同じマンションだってわかった時だよ。

学校の生徒の一人としては覚えてたんだ。

同じマンションなんだ~って思って、他の生徒にバレたらやだなぁとか思ってた。

それからなんとなく学校でも目にする度に自然と意識が向くようになって、ああこんな子なんだなって思ってた。

特別誰かと仲良かったりグループになってたりしないのに、いい意味でも悪い意味でも目立つことがなくってふわふわした子で、特に集団でいたがる学生にしては珍しいなってくらいだった。

それでもそれ以外の感情を持つことはなかったし、少しだけ特別な生徒でしかなかったんだけど・・・

ある日曜日にマンションの入り口で偶然君とすれ違ったんだ。


同じマンションって気づいてるのか気づいてないのかはわからなかったけどさすがにこの距離ですれ違えばバレるなって思って、正直嫌だったね」


「ふふ、先生って公私混合するのを極端に嫌がりますよね」


「うん、仕事上の人間にプライベートとか介入されたくないんだよ」

一見、真面目な人だが建前で、本当は適当なところが結構あることを瑞穂は知っている。

素なのか腹黒なのか、裏表がはっきりしているところもまた先生らしいと瑞穂は笑う。