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女子生徒は、保健室で保険医と一緒に保護者を待っていた。
まるで抜け殻のようにボーッとしていて、保険医も今はそっとしておいた方がいいだろうとあえていつも通りデスクに向かって仕事をしていた。
保険医が仕事をする音だけが響く静かな空間にそっと扉を開く音が響いた。
「手は大丈夫ですか?」
「・・・!あり・・・有明先生・・・」
女子生徒は有明の姿を見るなり驚き、慌てふためく。
「これくらい・・・大丈夫です・・・。
それよりも先生に怪我をさせてしまって・・・・・・ごめんなさい・・・」
有明の顔を見ることができずに俯く。
また泣いたのだろう、再び目が赤く腫れている。
「キミがこんな状態になるまで気づいてあげられなくてごめんね。
僕は教師として失格だよ」
「・・・・・・いいえ、私が・・・勝手に想っていただけだけですから・・・」
保険医はその様子を口を挟まずに黙って聞いていた。
「私・・・・・・地味で・・・暗くて・・・何をしても駄目なんです・・・。
いつもついてなくて・・・
友達もいないし・・・学校に来るのも嫌で・・・・・・
でも・・・
でも有明先生がいたから・・・学校に来ることができたんです・・・・・・。
ただそれだけ。
本当はそれを伝えたかっただけなんです・・・。
本当なんです・・・」
泣き腫らした目からまた静かに一筋の涙が流れる。
