有明先生と瑞穂さん

瑞穂は手を口の前に当ててクッと堪える。

布津にも携帯が渡った時同じような反応を見せた。


有馬は今にも奇声を上げそうな顔をして、深江はすごく楽しそうな顔をしてニヤついている。


「これが僕の本当の彼女です」


有明が女子生徒に携帯を見せたとき、全身の力が抜けたようにヘナヘナとその場に座り込んでしまった。



最後に小浜にその写真を見せる。


国見の顔を知る小浜はぎょっとして有明の顔を見た。


「・・・・・・う、ウソ・・・」

「嘘ではありません」


他の教師達もその写真を見て照れくさそうに「あれを見せつけられてはなぁ・・・」と頭を掻いてニヤついている。

それでも小浜は諦めきれずに声を上げた。


「嘘よ!だってその人同じ高校の・・・!」

「そうです。その頃からの付き合いです」

「違う!違うわ、だって・・・!」

別の教師が思い出したように口を開く。

「そういえばその人、最近よく校内で見かけましたね。
綺麗な方だから覚えてたんですが、なるほど。有明先生の彼女さんだったんですか」

教師のその言葉に小浜はさらに困惑する。


「違うわ・・・こんなの、この日のために作ったに決まってるもの」

「いや、しかしねえ、それはないんじゃないですか?」

「あんな綺麗なお嬢さんじゃねえ」



悲しいかな、幸か不幸か――


高校生でいたって普通な瑞穂に比べて年も近く綺麗な国見の説得力の強さは誰もを納得させた。

むしろ瑞穂と付き合っているというよりもそちらの方が自然だった。


瑞穂は少しだけむなしい気もするが、小浜が彼女と言われるよりは断然いい。


「ははは・・・」


力の抜けた笑いがこぼれた。




こうなってしまえば小浜が何を言おうと『彼女の写真を突きつけられて認めることができない哀れな女』としてしか見られずに、その言葉は誰からも信用してもらえない。


小浜はそれでもひたすら

「嘘・・・嘘よ・・・」

とブツブツ呟いていた。