有明先生と瑞穂さん

「・・・・・・」


瑞穂はぽかんと口を開けて立ち尽くしていた。

もう下手なことをすることはないと、口之津も手を離す。

目の前のことが信じられなくて、目をパチパチさせた。


有明はそんな瑞穂の方なんて向いていないのに、まるで見ているかのようにふっと笑った。




小浜は悔しそうに震える。


「どうして・・・?そうしていれば二人が疑われることなんてなかったのに・・・」


嘘をつくのはよくないことだが、これには誰もが賛同する。

小さな声だったので聞こえた者も少ないのだが・・・。




「その必要はないからです」



有明はもう一度笑った。



「前にもお話したことがあるのですが、僕には付き合っている人がいます」


深江が「あっ、聞いた聞いた!」と手を挙げる。



「職場でこういう個人的な話をするのはあまり好きではないので口にしたくはなかったのですが、今回ばかりは仕方がありませんね」


ひとつ小さくため息をつくと有明は怪我をした左手でポケットから携帯電話を取り出し、画面を開いた。



「証拠を見せろというのでしたらこれが証拠です」


校長と教頭の元へ数歩踏み出し携帯を差し出した。



「・・・これは・・・・・・」


校長は目を見開き、教頭はマジマジとその画面を見る。


何があるのが気になる教師達も後ろから覗き込むようにしてその画面を見た。



「・・・・・・?」


有明が何をしているのかわからない。
瑞穂は微妙な面持ちで有明と携帯を交互に見た。


「おお・・・これは・・・」

「あらあら・・・」


「え?・・・え?」



有明は「お恥ずかしいですが」と言いながら携帯の画面を見たがる教師や生徒に見せる。

その順番はすぐに瑞穂にもまわってきて、有明から直接「はい」と言って突きつけられた。



「え゙っ・・・」



瑞穂は噴出しそうになる。


なんともまあ、そこに写っているのはぎこちない笑顔の有明と、楽しそうに有明の首に腕を回す国見の姿だった。




(く、国見さん―――?!)