次の日――



有明は瑞穂が学校を休んだことを、瑞穂のクラスの授業になってようやく知る。

何一つ連絡がなかったことにショックを隠せなかった。



授業の終わりに有馬が心配そうに言う。

「布津・・・瑞穂、今日なんで休んでるか知らない?
もしかしてウチのせいかな・・・?」

有馬は自分が問い詰めてしまったことを気にしていた。

「ああ、違う違う!
ちょっとここのところいろいろ続いてたからさ・・・瑞穂もいっぱいいっぱいなんだよ。
だから俺が休めって言ったの」

「な、なんだそっかぁー」

ほっと息をついて笑顔を見せた。





受け持つ授業のない時間帯、有明は人のいない中庭で瑞穂に電話をかけていた。

プルルル・・・
プルルル・・・


『もしもし』

「あ、瑞穂さん・・・。今日休んでたみたいだけど、大丈夫?」

『あっ!あ、有明先生・・・!』


電話越しにガタガタという音がして瑞穂が慌てていることがわかる。


『あの・・・ごめんなさい、ちょっと具合が悪くてその・・・明日には出てこれるんですけど・・・』

「そっか・・・それならよかった。
だって全然・・・・・・」

『え?』

「あ、いや。なんでもないよ。
それじゃあゆっくり休んでね」


電話を切ると有明は重いため息をついた。



――逐一なんでも連絡してほしいわけじゃない。

そこまで束縛したいわけじゃないんだ。


もしかしたら連絡できない程に具合が悪かったのかもしれない――・・・



だけど――――






「はあ・・・」

電話を切った瑞穂はため息をつく。

少しだけ、有明との間にぎこちない距離を感じてしまう。

自分を守るためとはいえ、小浜のあんな提案を聞き入れたことが許せないでいた。


(でもこれは仕方のないことなんだ・・・)


学校をサボってひとりでいる部屋は何もなくてとても暇だ。

その分、誰の目も気にしなくていい。
誰からも攻撃されることなんてない。



今はただひとときの休息を――。