有明先生と瑞穂さん

「瑞穂さん、噂のせいで知らない子や上級生からの標的にされてるみたいなんです」

「・・・・・・!!」


小浜の言葉に全身の血が引いた気がした。



「標的って・・・!」

「いじめ・・・とまではいきませんが・・・

噂は二人が付き合っているということに関係のない人格否定するようなものまであるみたいですし、実際不良みたいな子達に囲まれたりするみたいで・・・

さっきのももしかしたら・・・」


小浜はそれ以上は口をつぐむ。


有明は、視界が揺れた気がした。

それほどに小浜の口から聞いた事実のショックは大きい。


「瑞穂さんが有明先生に言わなかったのは余計な心配を掛けたくなかったからでしょうね。
・・・でもどうせ黙ってても近いうちに有明先生の耳にも入ると思って・・・」

「いえ・・・話してくれてありがとうございます」


有明はため息をついてその場に座り込んだ。

小浜と目の高さが揃う。



「瑞穂さんって健気でいい子ですね」


有明が顔を上げると、小浜はふわりと笑った。


「そう・・・ですね・・・」



小浜が笑う。


まるで、天使のように笑う。



(ふふっ)



この時を待っていたと笑う――。



「私、有明先生も、健気でいい子な瑞穂さんも

二人とも大好きなんです。

だから二人が傷つくのを見たくない――・・・。

だから、私にも協力させて欲しいんです」


誰もいない給湯室。

それでも誰にも聞こえないように小浜はゆっくり有明に近づいて、声を潜めた。


「嘘でもお二人の潔白が証明されたらいいんでしょう?」

「・・・・・・」





「だったら私と付き合っているフリをしませんか――?」






誘惑するように、


潜めた声が有明の耳元から響いた。