ひとしきり笑った有明はいつもの笑顔で小浜に笑いかける。



「なぜそこまで僕と瑞穂さんを疑うのかわかりませんが・・・そうですね、たとえついでに僕からもひとつお聞きしてもよろしいですか?」


「なっ、何ですか・・・?」


「もし僕達が付き合ってるとして、小浜先生はそれを知ってどうしたいんですか?」


「・・・・・・っ、それは・・・」


小浜がうつむくと、有明は席を立って職員室から出ていく。


「待ってください・・・!どこに・・・」

「お手洗いまでついて来ますか?」

「えっ!」


職員室前の廊下で足を止めると、小浜も数歩後ろで立ち止まる。



「証拠を集めて校長先生や他の先生方に報告して、僕をここから追い出しますか?」


「・・・・・・」


小浜は気づく。

もう瑞穂との仲を認めているようなものだと――。



「私は・・・・・・」


答えることのできない小浜に有明は振り返らずに低い声で言う。




「それもいいでしょう。小浜先生の自由です。
でも・・・」





「瑞穂さんに害が及ぶようなことがあれば俺は―――」




「・・・・・・!!」




静かに怒るその後姿にゾッとする。


有明がゆっくりと振り返る。


その顔を見たくないと思うのに、視線を逸らせない。


「ぁ・・・・・・・・・」



しかし、振り向いた顔はいつもどおりの優しい笑顔だった。




「・・・全て、例えばの話ですけどね」




小浜は一気に緊張が解け、その場に座り込みそうになるのをぐっと堪えた。


後から悔しさが湧き出る。




――俺と駆け引きしようなんていい度胸だよ



有明が歩きだすともう小浜は追っては来なかった。