パタンと携帯を閉じ、「ありがとう」とお礼を言う彼はもう落ち着いているようだった。


(私はまだ、バクバクしてるよ・・・)


瑞穂はこっそりシャツのすそを握り締めた。



「これでひとつ、また瑞穂さんに近づけた」

「!」


顔をあげるとまだ赤いままの有明が嬉しそうに笑う。


(なんで・・・
 なんで私なんかを・・・?)


その笑顔に瑞穂はきゅっと胸がしめつけられた。





「ただいまー」

「おかえりなさい」

「ご飯ありがと、喜んでたよ」

「あら本当?よかった」


カラになった容器を渡すと母は嬉しそうに笑った。


「もう眠いから寝るねー・・・オヤスミ」

「よっぽどはしゃいで来たのね。おやすみなさい」

母に顔を見られないようにして洗面台に走る。

洗面台に行くと丁度父が歯を磨き終わっていた。


「おお晴か。おかえり」

「ただいまお父さん」


自分も歯みがきと洗顔をして自分の部屋に入り布団に倒れこむ。