我慢させているのは自分だというのに、有明は優しく抱きしめて髪を撫で、落ち着かせてくれている。



「ごめんなさい、先生」

「え?どうして瑞穂さんが謝るの?」

「だって・・・私まだ『そういうの』には答えてあげられないから・・・」

「ハハ、瑞穂さんがそう思うのはおかしいよ。
というか俺の中では・・・本当は卒業するまで手を出す気はないつもりだから」


――『卒業するまで』

(卒業しても一緒にいてくれるんだ・・・)


何気ない、未来を示唆する言葉が嬉しい。



「ふふふっ、でも先生意外と意思弱いですよね」

「う・・・。それはさっきとか、以前のことかな」

「手を出すつもりはないとかこういうことするつもりはなかったとか、何回か聞いたなー」

「・・・・・・言われてみれば」


クスクス笑う瑞穂に、指摘されて少し悔しそうな態度を取る有明。


「瑞穂さんが嫌がってるのに無理するつもりはないけど・・・じゃあいつかは我慢できなくなってやっちゃうってことかな」

「ええ?!ちょっとやめてくださいよー!野蛮ー!!」

「瑞穂さんいわく俺の性格がそうなんだから仕方ないよね」

「先生拗ねてる?!」


顔を見れば口を尖らせまるで子供のようだ。



「・・・・・・王子様な有明先生はそんなことしないんですよ」

「ナニソレ」

「有馬さん達の、有明先生に対するイメージです」

「・・・じゃあ瑞穂さんもそうしてほしい?」



「んーー・・・ううん。
そのまんまの有明先生がいい」



嬉しそうに笑う顔も子供っぽい。


この顔を知っているのも、実は意思が弱いことを知っているのも私だけだ――。




「じゃあいつかは我慢できなくて手を出しちゃってもいいってことで」


「ソレとコレとは違います!」