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「もう・・・どうして言っちゃうんですかぁ」

「正直ちょっとイラッとしちゃって」


いつものように有明の家で瑞穂はぐったりとうなだれた。


「次の日大変だったんですよぉ~。有馬さんスッゴイ荒れてて、便乗して口之津先生まで」

「俺も大変だったよ。
有馬さん職員室まで乗り込んでくるんだもん。
口之津先生は最近大人しかったのにまた睨んでくるようになったし」

「それは自業自得ですー」


瑞穂は盛大にため息をついて机に突っ伏した。


「・・・イヤだった?」

「べ・・・つに・・・イヤとかじゃないですけど・・・ただ恥ずかしかったっていうか・・・
だって目の前であんな・・・

あ、あんな・・・・・・」


思い出してカーッと顔が熱くなる。

今度は唸りながら両手で頭を抱えた。


その様子を有明は心配そうに覗き込む。


「・・・怒ってる?」


顔を上げれば間近に不安そうな顔が上目遣いで恐る恐る様子を伺う。
正直小浜先生の上目遣いより破壊力があるんじゃないかと思う程瑞穂をキュンとさせた。


「怒ってはないです・・・」

「よかった」


安心したように笑う顔がかわいい。


思わずそのままぼーっ見惚れていると


「俺がいるときにイチャついてんじゃねー!」


とトイレから返ってきた加津佐がズボンをチャックを閉めながら目の前に仁王立ちしていた。



「加津佐」

「おう?!」

「ズボンは履いてこい。
盗み見るな。
わざとらしくトイレから気配消して出てくるな。
音聞こえなかったけどトイレ流してないだろ、今すぐ流してこい。

そして文句があるなら帰れ」


「・・・すみませんでした」



「・・・・・・」



あの時声を張り上げた有明よりもこっちの方が断然怖い・・・


こんな有明を知ったら有馬も深江も小浜も落胆するだろうか。


それを想像するとちょっとだけ笑いがこみ上げる瑞穂だった。