君がいたから






その夜、俺は特にする事がなく暇だった。





ただなんとなく空が見たくなったから施設の庭の大きなベンチに向かった。





実はそのベンチ、昼間は皆の休憩場所になのに夜になると俺だけが知っている特等席になる。





俺はベンチに向かっていた足をピタリと止めた。





なぜなら、そこには昼間の姉妹が座っていたからだ。





だが俺は驚いた。





姉の鈴原千秋が昼間の冷たい目じゃなく妹に優しく、温かい目を向けていた。





昼間はあれだけ表情が冷めていたのに。





今は口元を少しだけ吊り上げている。





なんだ、笑った顔も出来るんじゃないか。





他人の事なのに、





今日出会ったばかりなのに……





内心、安心した俺がいた。