サンタは赤く冷え切った手を暖炉の前で温めながらあの子供の話をした。
両親が死んで、親戚に引き取られた小さな子供は、暫くしてその親戚が妹に酷い事をしている事に気付き、サンタに大人を殺せる銃をくださいとお願いしたのだ。
当然その子供は殺人犯だ。子供であろうと人を殺すことはタブーとされている。けれど、これは妹を守った結果の惨劇、もしかすれば死神だって見逃してくれるかもしれない。そんな事をサンタと話した事を思い出した。
サンタには下界で言う赤いサンタと黒いサンタがいる。
けど、黒いサンタは元々赤い服を着ていて、悪い子供を殺したときに付いた血で、赤い服が黒ずんで見えるだけ。下界で言う黒いサンタは死神の代行をしている。死神の恰好で行くとどうも警戒されるらしく、本来プレゼントをくれる赤いサンタが目の前に居ると大した抵抗もしないで簡単に片付いてしまうらしい。
だから死神は面倒な子供の始末をサンタに任せて、報酬を渡す。その報酬こそが本来良い子だとされる子供に渡すプレゼントの資金になる。どちらも欠けてはいけない仕事なのだ。
そして…。赤いサンタになるためにはまず、黒いサンタにならなくちゃいけない、と言うのがいつの間にかサンタの掟になっていた。
まぁだからと言って16になる頃に黒いサンタとして処罰をしなきゃいけない子供がいるとは限らないのだ。だからこうして年齢は足りていないのにこういうテストだけを先にやらせようとする。



「…嫌、だな」

「止めとくか?テスト」

「…そう言う意味じゃないよ。妹を守ったなら、さ…少し多めに見たって良かったんじゃないかって…思っただけだよ」

「あぁ…妹も死んだんだよ」

「え…?」

「流れ弾に当たって、な…」