「私は何も、壊してないわ!これを取って!ねぇ、執事の人は?あの人は何処ッ…!」
「ルーホなら、すぐ傍に居るよ。それより、君に一つお友達を助けれる方法を教えてあげよう」
「…クリスたちは起きるの…?」
「あぁ、起きるとも。でも、私が起こす訳にはいかないんだ。君がしてくれるというのなら…」
「何だってするわ!私はクリスたちを迎えに来たんですもの。何をすればいいの…?」
「これを飲むと良い。これは夢の中に入る薬。これを飲んで夢の中に居るお友達を連れて来れたなら、みんな目が覚めるんだよ。少し不味いし、苦しいけれど…やってみるかい?」

暗がりだからか、主人の持っている瓶の中の液体はとても黒いものの様に見えた。それでも、たった一つしか方法がないのなら、それが私にしか出来ないというならやるしかなかった。

「やります」

小さな瓶をそっと開けた主人はそのまま私の口に液体を流し込んだ。
咽返りそうな苦い味に驚きながらも飲み干すと、身体がビクリと跳ね返り身体の中が一気に熱を持ち始め、息が出来なくなった。
苦しいとベットの上でもがき続けても主人はただ、そんな私を見下ろしているだけで何もしてはくれない。
呼吸が出来ない状態で、口をパクパク開けていると、執事の姿が見えた。
今にも泣き出しそうな執事の瞳はずっと私を捕らえている。
浅い呼吸の中、口の周りを唾液でベタベタにして、私は呼吸を止めた。