家を出てしばらく歩くと、クリスのお母さんとお父さんが井戸を一つずつライトで照らして覗き込んでいた。
もし、私も居なくなったら、パパとママは必死に探してくれるのかな?と思いながらも、今クリスのお母さんたちに見つかってはクリスを助けに行けないと思って少し遠回りをしながらお屋敷へと急いだ。

昼間に見るお屋敷と、夜に見るお屋敷はまるで別のおうちのように違いがあった。
昼間はかくれんぼにいい場所なのに、夜になると、高く育った植物の中から何かが飛び出してきそうな雰囲気だし、白い壁のお屋敷は、ひび割れていてとても怖いものに見えた。
しばらく入り口でお屋敷を眺めていると、1階の窓に小さな光が見えた。
中に人が居たら、クリスたちのことを知ってるかもしれない。私はゴクリと唾を飲み込んで、行き先を邪魔する植物を掻き分けて玄関へと近付いた。
私の何倍もある大きなドアは叩いても誰も出て来ない。怒られるかもしれないけど、後で謝ろうと思ってそっと扉を開いた。
重たい大きなドアはゆっくりとキィキィ音を鳴らしながら開いた。
真っ暗なお屋敷の中は埃っぽくて部屋中が冷え切っていて寒い。
正面の壁に作られているステンドガラスの窓は外のつきの光をかろうじて部屋の中へ運んでいた。
階段を上りステンドガラスを見てみると、少し割れている部分もあって、そこから外の冷気が入り込んでいた。

「なにを、お探しかな」

いきなり声を掛けられて勢いよく振り返るのと同時に足を滑らせてそのままその場に尻餅をついた。

蝋燭の明かりを持った男の人はオレンジの光が当たっているはずなのに、顔は真っ白で綺麗なお人形みたいだった。