『別に意味が分からなくて結構、離せ』

『・・・っ!!』

『・・・泣いても俺には効かないから』

俺は南朋の腕と俺の腕を無理やり引き裂いた。

『・・・一馬』

『今度はなんだよ』



『私と付き合わないと、梓をいじめるからね』



『は、そんなこと出来もしないくせに。帰るぞ』

『そんなこと言ってて良いの?私の周りにはいっぱい「可愛い」後輩達がいるんだよ』

『・・・汚ぇヤツ』

『良いよ別に。どんな事を言われようと、どんな手を使おうと。一馬が私の彼氏になってくれるんだったら気にしない』

『っ・・・』

南朋は本気の目だった。
表情は夜で暗かったから見えなかったが、ギラギラ光る目は俺を情緒不安定にさせる。

やっと分かった。
―――――南朋は本気なんだ。

『・・・俺がお前と付き合ったら、本当に梓をいじめないか?』

『うん、でもそのかわり・・・』

『なんだよ、まだ条件があるのか』

『良いんだよ?私と付き合わなくても、梓はいじめられるけどっ』

『っ・・・、そのかわり?』

『そのかわり、今後一切、梓の前には現れないように』

―――――――――――

そんなこと、出来る訳がないだろう。

「・・・」

もう三日も梓に会っていない。
今日帰ったら南朋に内緒で梓の家に行こう、このことを教えないと。

「一馬っ!なーに考えてんの?」

「なんにも考えてねーよ。お前、違うクラスだろ。早く帰れ」

「っちぇ、分かったよぉ。じゃーねー!」

「・・・」

なんで俺、こんなヤツと一緒にいるんだろう。
こんな悲劇、なかなか無ぇぞ。

まるで『ロミオとジュリエット』だな。