「一馬先輩っ、後ろ危ないっ!!!」

「っ!!」

やっべ、かわしきれねぇ・・・
俺はふいに目をつぶった、ってつぶってもしょうがねえ。
俺はまた目を開けた。


ガシャンッ


「きゃあっ!!」

なんだ今の音、気になった俺は後ろを向いてみた。

「おい・・・マジかよっ!!!」

・・・あ、梓がフェンスを飛び越している。

「ぐはっ!」

そのまま梓は俺の後ろにいるヤツを蹴り飛ばした。
す、すっげー破壊力。
梓の足が腹に綺麗に入ったらしく、そいつはその場で倒れて口から泡を吹き出している。

「こいつ、本当に女かよっ!!」

今の言葉は勘にさわったが、確かに俺もそう思った。
いつから梓、こんなにアクティブになったんだ。

「あ、梓。どこでそんな技を・・・」

「いや、たまに様乃が空手教えてくれるから」

・・・梓とケンカするのは死を招くと憶えとこう。
とにかく、なんだか楽しくなってきた。

「あ、あと昔、前の学校で合気道習ってた」

・・・梓には本当にいつも驚かされる。
今日は特別にビビってけどっ(笑)

「一馬は?なんか習ってたの?」

「いや、俺の兄貴がいっつもけしかけて来るから。それに慣れちゃって」

「へー、結構私と似てるかも」

あはは・・・って、笑ってる場合じゃあなかったっけ。
あ、ほーら皆さんご機嫌斜めみたい。

「お前ら、のんきに話し合ってんじゃねぇよ」

「わりーわりー、先輩達のこと一瞬忘れてた」

それを聞いた先輩達は何度も何度も耳障りな歯ぎしりをしていた。
うるっさいなぁ。

「すいませーん、その『おっさんくさい』歯ぎしり。止めてくれません?レディー達の前だし、そんなんだとモテませんよぉ」

ははっ。
今の梓の一撃で完璧にとどめを刺したな。
こりゃ傑作だ。