「やっば・・・」

「し、信条さんがいじめてたんですっ!!」

「なっ!?」

コイツら、こんな修羅場でも嘘を言えるなんて。
しかも泣きまねまでしてるっ!

「おいマジかよ信条、一人でかっ?」

後ろで一人の先輩が私に言った。

「先輩っ!!違いますっ!!」

私は後ろを向いて先輩に張り上げた、こんな大声が出せるなんて自分でも驚いた。
そうするとその先輩、私が抗議してくると今度は一馬にこんなことを言い始めた。

「おい一馬、こんな怖い彼女持ってんのかよ。お前も尻に敷かれる様になったもんだなー」

なんだこの先輩っ、一馬にそんなこと言うなんて。

私は頭のなかで戦闘体勢にはいった。
堪忍袋、多分もうすぐ切れるな。

「先輩、それぐらいにしといて下さい。梓はそんなヤツじゃありません」

「ヒュー!おいみんなぁー!一馬が久々にキレるぜぇーっ!!」

「こりゃあ見物だなっ!」

「いけー!」

先輩の周りにいる部員達がケンカ見たさで騒いでいる。
本当に鬱陶しい。

「てめぇら黙れっ!!」


ビクッ


急に先輩が叫んだ、一瞬で空気が変わる。
私の後ろでは女子達がザワめき始めている、私も心臓が爆発しそうだ。

「おい一馬ぁ・・・なんだてめぇ、サッカーのキャプテンだからって調子こいてんじゃねーぞ」

「調子なんてこいてません。どっちかというと先輩の方がいろいろ騒ぎ起こしてんじゃないですか?」

「てめぇ、俺にケンカ売ってんのかよ」

「まぁ・・・先輩が思った方で」

「一馬っ!!てめぇっ!!」

そういうと先輩は手を固い拳に変えて一馬に向けた。
一馬はそれを冷たい目でじっと見ている。

「きゃあああああっ!!」

女子達はそれを見て叫び出す、私はフェンスに手を掛けた。
・・・とりあえず一馬は先輩の拳を軽くかわした。
だけど一馬はそのせいで見えていない、後ろにもう一人が殴り掛かろうとしているのを。

―――――もちろん、私はそれを見過ごさなかった。