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キ―ンコーンカーンコーン



「起立っ!礼っ!ありがとうございましたー!」

今日も一日平和に過ごし、『MIKO髪』も習得。
いじめもなかった。

「今日は一緒に帰れる?」

「うんっ!あ、待って。今日って一馬、部活あったっけ?」

「水曜日だけど」

「あ、無理」

「ぇ、でも…南朋は?」

あ…そういえば。
私はもう彼氏彼女の関係じゃない、すっかりそのことを忘れていた。

いつも一馬を迎えに行って、一緒に帰って。
…私の家の前で、意地悪なキス。

でも、もうそんな権利。

「どうする?」

「…行ってもいいのかな」

「ん~…」

様乃は腕をくんで考え込んだ。
私は正直、一馬と一緒に家まで帰りたい。

でも、またそこに南朋がいると思うと…


「行ってくれば?」

「え?」

「良いんじゃない?梓が行きたかったら行けば良いし、嫌だったら私と一緒に帰れば良いし」

「でも、南朋が―――――」

「そんなの、もうどうだって良いじゃん」

…急になんだか私に掛かっていた鍵が解かれた。
凄く…優しい気分。

無意識に笑顔になっちゃう。

「その様子じゃ帰りたいんでしょ」

「…ゴメン、また明日っ」

「じゃーあね~」



私はカバンを肩にかけ、様乃に手を大きく振った。
生徒達がいる廊下、私は一馬のことだけを考え走って行った。

上履きのまま、私は気付かない。

胸がはちきれそうなほど愛しい。


もうすぐ会える。