雨の日と曇りの日は嬉しかった。
何故なら、光に怯えずに彼女に会いに行くことが出来たから。


晴れの日は怖かった。
何故なら、光が僕の全てを写し出してしまいそうだから。
そして、彼女に会いに行けないから―。

いつの間にか、話をするようになった。初めて話した時は、今でも覚えている。彼女から話しかけてきてくれたのだ。
その日はボンヤリと空を見ていた。灰色に重たく雲を積み上げていた。

「何を見ているんですか?」

突然誰かが話しかけてきた。
僕が振り向くと、彼女が立っていた。
綺麗な黒い髪をしていた。漆黒の空と同じ黒だった。夜空の優しさの意味がわかるような気がした。

「あ…、雲を…」

あんなに話せたら良いのにと思っていたのに、いざ話しかけられたら何も言えなかった。
思わず顔を背けた。

「雲?うわ、動いてる!」楽しそうに彼女は言った。
その姿を見たら、思わず笑ってしまった。

「なぜ笑うんですか?」
不思議そうに僕を見ている。

「すみません。だって、空は風が吹いてるから、雲は当然動くのに、初めて見た!みたいな感じで言うからつい…」

そう言うと、連れて彼女も笑った。