彼に鈴をプレゼントしたその夜、私の容態は悪化した。
元々長くはもたない体を、無理して雨の日に晒していたのだ。こうなって当たり前だった。


この奇病になってから、私は好きだった雨の景色を、見ることが出来なくなった。
あの匂い、空から降る水滴が、水溜まりに作り出す波紋、ゆったりと流れるあの間隔…
いまでは二重になった窓ガラス越しに、うっすらと雨が落ちるのがみえるだけだった。
ベッドに寝たまま首だけを窓に向け、空を眺めた。もうじき雨があがる。雲の合間から陽射しと青い空が見えた。



もう彼に会うことはないだろう。兄に事情を話して貰うように頼んだ。
何かは分からないが、私は彼に近いものを感じていた。
別に傷をなめ合うなんてことをする気はなかった。
ただ、友達が欲しかった。

もうじきこの世界から消えてしまうことは分かっていた。
いつか誰からも忘れられてしまう事が怖くて、誰かの中に自分を残したかった。

そして、彼に出会った。