一ノ瀬君は昇降口で足を止めた。
「さすがに上履きはマズいから靴履いてね?」
えっ?
外行くの?
いくら9月とはいえ、未だ残暑が厳しい日中に外へ出るのには気が引ける。
あたしが靴に履き替えることに躊躇していると一ノ瀬君が腕を組みながらやって来た。
「別にお前がいいならオレはそのままでも構わないけど?」
そう言って顎を軽く上げて意地悪く笑いながらゆっくりと近づいてくる。
コイツなら本当にこのままでも連れ出すだろう…
「履きます!履きます!履かせていただきますぅっ!!」
あたしは慌てて靴を取り出し、上履きを下駄箱に押し込めた。

