はぁはぁと息を切らしながら言ったあたしに、彼はちょっと驚いているようだった。
フンッ
何よ!驚いた顔しちゃってさ!!
みんながみんなアンタにこんな事されてメロメロになるなんて思ってるなら大間違いよっ!!
あたしはアンタみたいな奴大ッキライだっ!!
って…不覚にもちょっとドキドキしちゃったけど…
それは…あたしはキスとかした事ないからで…
なんて心の中でバカな言い訳を自分にして。
一ノ瀬君は何も言わずあたしを見つめていた。
ものすごく切ない、悲しい目で…
何だろう…
泣いている訳じゃないのに今にも涙が零れそうなくらい悲しい目。
ブラウンの瞳が揺れていた。
あたし…?
そんな目をさせちゃう程ヒドい事言った?
何よ…泣きたいのはこっちなのに!!
目を先に逸らしたのは一ノ瀬君だった。
「つまんねぇの…」
そう言い残して彼は階段を下りて行った。

