「“一ノ瀬君”なんて呼ぶなよ」



は?



何を言うのかとパッと目を開けると一ノ瀬君はゆっくりと顔を近づけてきた。



「えっ…」



ブラウンの瞳があたしの目の奥を捕らえる。

真剣なその瞳から目を逸らす事なんてできなかった。


ドクンッ



心臓が音を立てる。



睫を伏せた彼は顔を傾け、唇をあたしの唇に近づけてきた。



彼の甘い香りが鼻をくすぐる。


キ…キスされる!?



と、思ったら彼の唇はあたしの頬を通り過ぎ、耳元で小さく囁いた。



「名前で呼んでよ…真琴……」


「…っ!!」



ドキドキドキドキドキドキ…



あたしの心臓うるさい!!!



一ノ瀬君はパッと顔を離して意地悪く目を細めニヤッとした。


「あれ?何か期待しちゃった?」



そして舌をペロッと出した。