「ねぇ!…ちょっと!!」
「……。」
「手!!離してよっ!!痛いし!!」
「……。」
廊下でみんな見てるし…
すっごい恥ずかしいんですけどっ!!
あたしの声に耳を貸すこともなく、一ノ瀬君は手を握りしめたままどんどん歩いて行く。
「ねぇ!!聞いてる!?」
「……。」
何なのよ…もぅ…
時折前を歩く一ノ瀬君からフワッと甘い香りがする。
香水?シャンプー?
分からない。
分からないけど何かホッとするような…
そしてどこか懐かしくもある香り。
髪の毛サラサラだなぁ…
廊下の窓から入る日に照らされた栗色の髪はキラキラと輝く。
そのままあたし達は階段を上り屋上の踊場まで来た。

