たった一人…。


「ねぇ、どうしたら良いと思う?」

「香理は田村くんの事、嫌い?少し、冷静になって気持ちの整理ができるまで距離をおいてみたら?」

「今でももちろん好きだよ。でも、今は一緒にいる時間が辛い…。でも、距離をおくとこのままダメになっちゃいそうで怖い。」

「確かにね。距離をおく事で結果別れる事になるかもしれないけど、でも私達はそうする事で心の中に常に相手の存在がある事を再確認出来たし、それで信頼し合えるようにもなった。」

「そうなのかなぁ。」

「だってさ、整理がつくまで全く会わないってわけじゃないでしょ?ただ、日常的に相手がいる事を当たり前にしないだけ。」

「そんなので、何か変わるのかなぁ?」

「でも、このままだと何も変わらないよ?」

「うん…。そうだね。」

「んで?奈央の方は?話って何?」

そう聞いてきた香理の顔はにやけてる。

「何、その顔は。でも、良い話ばかりでも無いんだけどな…。」


「江本さん、豊広さんの前彼女だったらしくて。前に彼と話してた事があって…。形あるものは捨てれても、思いでは捨てれずにいてまだ忘れられないって。」

「そうなん?じゃあ、すっごいやりづらかったやろ!辞めて良かったね。豊広さんと戻ってきたし。」

「うん…。そうなんだけどね。」

それから、私は江本さんの妊娠の事も、倒れた事件も、お見合いの事も、全部話した。

「何か聞いてたら、身勝手だよね?」

「うん…。でも、それでも良いの。」

「ふーん。じゃあ、やっと元通りに戻れたんやね?」