わたしとあなたのありのまま



 でも殴られなかった。


 反射的につぶった目を恐る恐る開けると、エリカ先輩の背後に田所が立っていて、高く掲げられたエリカ先輩の右腕の手首を、田所が掴んで制止していた。

 驚いたように田所を見上げるエリカ先輩を、無表情で見下ろしながら、

「お前、何やってんの?」

 田所は冷ややかに言った。


 エリカ先輩の手首を掴んだまま、田所は続けた。

「俺の彼女はエリカだろ?
 なにビビってんの?」

 再びエリカ先輩は、美しく涙を流す。


「見てみろ」

 言って、私たち三人を映している鏡に視線をやり、鏡越しにエリカ先輩を見詰めた。

「誰が見たって、あいつよりお前のが可愛い」

 そう言いながら、同じく鏡越しにチラと私を一瞬見た。