わたしとあなたのありのまま

そして、もう一度私の方を二人して見上げた。



「ごめんなさい、ありがとう! 今すぐ降りてそっち行くから……」


大声で伝えると、彼はニッと両口角を上げて笑った。


え? なに? ニッって……。



彼は私の携帯を、制服ブレザーのサイドポケットにスルリと入れると、何事もなかったように再び歩き出す。


「ちょと待って! 私の携帯!」



彼女が彼の袖を引っ張り何か言っている。多分、『返さなくていいの?』って言っているのだと思われる。

それなのに彼の方は、そんな彼女の肩に腕を回し、私の方など見向きもせず歩き続けた。多分、『あんなバカ放っといて、行こうぜ』とか言っているんだ。



てかさ――


返せよー、私の携帯! 私のこと、バカ呼ばわりしたって構わないからー!