わたしとあなたのありのまま

「なんでもない」

　余裕の笑みを浮かべて、そう言ってやった。
　田所はそんな私に拍子抜けしたのか、キョトン顔で不思議そうに私を見詰めた。


「ちょうど良かった、田所に話があるんだ。
　ちょっといい？」

　一瞬だけ、田所の表情が強張ったような気がした。
　少し間をおいてから、ようやく「なに？」と、いつもの意地悪な笑顔を見せる。

「ここで？」

　聞くと、

「うん、どうぞ」

　と答える。

　皆が注目しているのに……
　少しは空気読んでくれよ。


　私は一歩、歩み寄って田所を見上げ、

「愛の告白ですけど!?」

　周りに聞こえないよう声をひそめて言った。


「お前やっぱり……」

　言いながら、私の頭を両手でガシと掴む。
　そして乱暴に前後に揺すりながら、

「その頭ん中で、
　脳みそグチャグチャんなってんだろ？」

　腹立たしげに言った。