わたしとあなたのありのまま

「山田に聞いてみて良かった。
 男の本音がわかった気がする。

 だから、
 もうそれ以上、何も言わないでくれたまえ」


「いや、全然わかってねぇだろ?
 今、現実逃避しようとしただろ?」

「うるさいよ!」

 と、怒鳴りつけてはみたけれど、いつもの山田に戻ってくれて、実はホッとしている。

 だって、シリアスな山田だと調子狂うから。
 うっかり恋愛相談などという、血迷った行動に走ってしまうから。



「ほのかー」

 戻って来たらしい綾子に大声で呼ばれた。

 どうして教室に入って来ないのかと不思議に思いつつ視線をやると、私に向かっておいでおいでをしている。


 しぶしぶ行ってみれば、綾子の斜め後に、

 田所がいた。


「売店で偶然会って……
 ほのかのこと聞かれてさ」

 綾子は、申し訳なさそうな、困ったような顔でそう言った。