わたしとあなたのありのまま



「さわんじゃねぇ」

 言って田所は、私の手首を優しく掴んで自分の頬から剥がし、その手に指を絡ませた。
 そして、
 田所の顔がゆっくとり近づいてきて。

 反射的に瞼を閉じれば、唇に柔らかい感触。


 けれどもそれはすぐ、フワリと離れてしまった。
 寂しくてまた泣きそうになるのは何故だろう。


 目を開ければ、『しょうがないからしてやった』とでも言いたげな田所の不満顔。

「どうして?」

 と問えば、

「何が?」

 と返す。

「『何が?』って、今の!」

 ムキになって強く言うと、

「お前だって目ぇ閉じただろうが」

 また平然と返された。
 くっそぉ……