田所がボタンを押す瞬間、思わず――
顔を背けてしまった。
なんだかとても切なくなってきて。
さっきまでの田所にすごくはらわたが煮えくり返っていて、でもこんな田所の優しさがやっぱり私は大好きで。
私の意に反して、生温かい雫が左頬を伝った。
田所の前で私が泣くのはいつものことで、田所はすでに耐性が出来てしまっているのだろうか。
何も言わずに、また私の後頭部を左手で包むと、自分の左胸に私の顔面を押し付けた。
「鼻水付くよ」
くぐもった声で言ってやると、
「ほのかの分泌物だったら平気」
そんな言葉がすぐに返って来た。
キュルルン、再び……



