わたしとあなたのありのまま



 学校最寄の駅の切符自動販売機。
 意外と込み合っていて。

 定期を持っていない私も、その中に混じって並んだのだけれど、やっぱり私は要領悪くて、私の列だけちっとも進まない。
 先頭を見れば、お年寄りが悪戦苦闘していた。

 隣の列に並んだ田所は、もうすでに自動販売機まで辿り着いていた。


 はぁ……


 切符を買い終えた田所が振り返った。
 不機嫌マックスな顔で私の方へとけだるそうに歩いてくると、二枚の切符を私の目の前に差し出し、親指でクイとその一枚を飛び出させた。

「え? あ、ありがと」

 なんだかんだ言っても、当たり前の様に優しい田所に、さっきまでのムカつきも忘れて、キュルルン。
 切符を受け取って、手に握り締めていた財布からお金を出そうとすると、

「後でいい」

 言って田所は私の後頭部を片手で包み、私を連れて改札口へ向かった。
 見上げれば、田所は相も変わらず不機嫌顔、正面を向いたままこちらを見てもくれない。

 けれど、田所が触れている後頭部は、妙に温かくて。
 とても心地よかった。