わたしとあなたのありのまま

「放してよ! 放せ、バカ!」

 振り返って見上げ、田所の横顔に向かって喚いてみるも、田所は知らんぷり、無表情。
 綾子に視線を移せば、その背中はどんどん遠ざかっていく。

「あやこぉー!」

 助けを求めて大声張り上げると、綾子は立ち止まって振り返った。
 が、田所に強制連行される私を見て、笑顔で手を振ると、無情にも再び背を向け、何事もなかったかのように歩き出した。

 そんな……


 あっという間に、昇降口へと連れ戻された。


 トンッと両足の裏は地に付いたけれど、田所の右腕は私のお腹に巻きついたままで。
 田所が、少し離れた円陣に向かって言った。

「てる、俺の靴取って。
 あとカバンも」

 言いながら、呼ばれて円陣から飛び出て来たてるやくんに向かって、片足ずつブン、ブンと振り上靴を放った。