「うん」

 どう返せば良いかわからなくて、ただ頷くと、山田はその顔に、なんとも切ない苦笑を浮かべた。
 そうして私に背を向け、ベランダにはみ出していた身体半分も、教室の中へと入れた。


 再び運動場へ視線を落とせば、ふて腐れた顔の田所が、描かれた円の中にしゃがみ込んでジッとしている。

 ルールに忠実な男、田所であった。


 ねぇ山田。
 心配かけてごめんなさい。

 けれどもあのヤンチャ坊主が、私を幸せにしてくれる訳がないのだ。
 だから、
 私は自力で幸せを掴んでみせる、そう決めた。
 今決めた。


 山田はマネージャーさんと、心置きなく愛を育んでよね。