「てるや?」 途端、田所が不機嫌になり、彼を押し戻す。 甘酸っぱい香りは、『てるや』と呼ばれた彼からのものだった。 てるやくんは、可笑しそうにニンマリ笑い、 「ガム。ほのかちゃんも食べる?」 と、ジャージのポケットを探るので、 「いらない。 畠山に怒られちゃう」 体育の先生を口実に断った。 「行こう、ほのか。 授業始まる」 綾子が言い、てるやくんがまた、綾子に視線を戻す。 ああ、気まずい。 とりあえず、田所とてるやくん二人に、軽く手を振って、私たちは体育館へ向かって走り出した。